KPY1

はい、吉田です。ただいま留守にしています。

メッセージを残してもらえると、、、、

「ごめん、ごめん、今帰ってきた、どうしたの?」 ショーは急いで受話器をとり、あわててしゃべり出す。

『なにがどうしたのよ!?今から開会式でしょ、テレビ見ている?』 ガールフレンドのマイが不満げに応える。

そうだ、今日は東京オリンピックの開会式の日だ。2020年7月24日、全世界が今、東京に注目している。

ショーはおもむろに、小さなマウス型のデヴァイスに指をかざす。

そうすると自動的にリビングの電気が付き、いつもの様に、お気に入りのテレビ番組が勝手に付き(といっても今日は全ての局がオリンピック1色だが)、そのマウスが話し出す。

 

~ ショーさん、おかえりなさい。今日はいかがでしたか?ミーティングが四件と締め切りが一件あったので、お疲れでしょう。

~ 今日のヘッドライン・ニュースを読み上げますか?おっと、今日はオリンピックの開会式でしたね。今日のトピックは、全てスポーツ関係で、、、、

 

2017年7月24日、ちょうど3年前のこの日、Kコーポレーションから発売されたマウス型のAIアシスタント~ピイ/PYにより、全ての人の生活は激変した。

 

その白くツルっとしたデヴァイスに指をかざすと、生体認証により、その本人を認識する。

その人のプロファイルから、名前、性別、歳、好みなどにより、様々なサーヴィスを音声で自動的に提案してくれる機械だ。

 

情報から最適なものを出してくれるだけでなく、AIにより、その人の趣向にあったものを日々学習し、賢く話してくれる。

日々の声を聞き、それを蓄積し、声紋や話の流れ、口癖なども覚える。

ショーは、さえないIT系のサラリーマンだが、そんな賢いAIが、ITやプログラミングの世界からも仕事を奪っていっている。

しゃべるだけでコードを書いてくれたり、またはAI自身がよりスマートなプログラムに自動的にアップグレードされたりする。そんな世界がもうそこまで来ていた。

 

そのAIデヴァイスのピイは、カメラも内蔵しており、そこから顔の表情、顔色、雰囲気を読み取る事もできる。

例えば、触れた指から、体温、心拍数、汗の量などを読み取り、声のトーン、顔色から、

~ 少し顔色が悪く、微熱がありますね。お疲れでしょうから、今夜はあっさりした夕食を摂って、早めに寝て下さい、などと言ってくれるのだ。

「はいはい、ピイはなんかお母さんみたいだなあ。わかったよ、今日は冷凍の山菜うどんにするよ。」

「ピイ、山菜うどん、温めておいて」

~ はい、ショーさん。おうどんが好きかと思って、もう準備しています。30秒後に電子冷蔵レンジを覗いてみて下さい。

「さすがピイ、気がきくなあ~」

『ショー、何をぶつぶつ言っているの!もうすぐ聖火が灯るわよ!』マイが叫ぶ。

2020年、二回目の東京オリンピック。東京の新国立競技場にもうすぐ聖なる火が灯る。

 


 

その同じ瞬間に、ショーは新国立競技場の中にいた。

オリンピックの為に集まった世界の要人を、シークレット・サービスとして警護しているのだ。

実はこのオリンピックの開会式にあわせて、テロの兆候があった。

この最高の舞台で大惨事を起こさせてはならない。一般人の姿で、競技場の中、要人の座るレセプション席の周りを歩きながら、目を光らせているショーであった。

 


 

さきほどの自宅で電話に出たショーと、シークレット・サービスのショー、どちらも同一人物である。

 

どういうことか。

 

それは、あのKコープが開発したAIデヴァイス~ピイだけがそれを知っていた。

 

 

Too be continued…

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